【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ20)

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あんぐりページ20

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結局あの量をほとんどゾムが食べたのには驚いた。体格は良いものの、その身体のどこに食べ物が入っていったのか、まるで分からなかった。最早人体の不思議。ゾムの胃の中はブラックホールに繋がっているのかもしれない。
食べ過ぎてうぷ、となりながら店を出る。こっちはお腹がはち切れそうだというのに、ゾムはしれっとしていて至って普通のようだった。信じられない。あんなに食べたのに。
そう遠くない駐車場の車へ向かう途中、ゾムはピタリと立ち止まった。それに気付いたAが怪訝そうな顔で見る。なにか忘れ物でもしたのだろうか、と心配したのだ。人間生きていればそのくらいのこと、何度かある。そう思って、何を言い出すのか待っていた。
すると、ゾムは口を開いた。

「お嬢、今からラーメン行かん？」
「は？」

これには、あまりの衝撃にAもあんぐりと口が開いた。言葉として何を言っているのかは分かるのに、この状況でそれを言われると本当に意味が分からない。
あれだけ食べたのに、まだラーメンが入るというのか。この男は。Aは今にも目眩がしそうだった。

「もう帰るから！」

Aはくるりと踵を返し、車に乗り込んだ。それでゾムも仕方なく車に乗る。コネシマの言っていた仲直りが出来たかどうかは分からなかったけれど、少なくとももうゾムと焼肉に行くのはやめようとAは決意した。
後から聞いた話だけれど、ゾムのこのお腹いっぱいでも食べさせる行為のことは食害と呼ばれ恐れられているらしい。コネシマも被害者のひとりだと聞き、予めそれをしないよう注意してほしかった、と少し恨みがましく思ったのだった。

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