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 その日の夕方。Aはシャオロンに庭園を案内してやると言われて、初めて外庭に足を踏み入れた。捕虜だから上司の許可無しには入れず、間接的にしか聞いていなかったそのワンダーランドに心躍らせながら、Aは外庭への門の前で四つ葉のクローバーを探していた。空が鮮やかな桃色で、これから日が暮れることを暗示している。
 シャオロンとの待ち合わせの十分も前についたAは、目を凝らして奥に見える時計塔を見つめて、再びクローバー探しに戻ろうとしたとき。

 「A!」
 「! シャオロンさん!」

 こっちこっち、と跳んで手を振ると、シャオロンは蜂蜜色の瞳を途端に細めて、駆け足で寄ってくる。生えている尻尾も相まってその様子がなんだかポメラニアンみたいで無邪気でいじらしい。

 「ごめん、待たせちゃった」
 「いえいえ、まだ集合時間までありますし。外庭見るの楽しみで、私が早く来すぎちゃっただけです」
 「そお? ……そんな楽しみやったん?」
 「そりゃあ、私原則立ち入り禁止ですし……」

 捕虜だし…… とあからさまにAがしおらしくすると、シャオロンは攫った張本人として申し訳なくなったのか、気丈に明るく振る舞いAの腕を掴んで笑う。

 「ま! うちの庭園綺麗やし、見てってよ」

 先程まで人間のAを警戒していた門前の兵隊たちも、シャオロンが来た途端に警戒心が緩んだ。彼もこの国じゃ恐らくそこそこなポジションなんだろうなと思いつつ、まあメイドのAは関係ないので脳死しながら大人しく手を引かれた。
 季節は冬。メイド一人一人に支給されるケープを纏っても貫通する寒さに身を震わせながら、Aは咲き誇る椿を見つめながら会話を交わす。

 「これ、椿ですか」
 「ごめん、わからん」

 半笑いでそう返すシャオロン。どうやら花の知識はまるきりだめらしい。Aはくすくす笑って適当に相槌する。

 「春にバラが咲くのは知ってんねんけどな」
 「バラですか! いいですね、見てみたいな」
 「じゃあ春にまた見に行こ」
 「ぜひ!」

 薔薇はいい花だ。Aのように花の知識が薄くても美しさが全面的に感じられる、わかりやすい花。時期じゃないけど、こんなに広いんだ、探せば秋薔薇があるかもしれない。
 Aはあたりをきょろきょろ見渡していると、視界の隅に薔薇らしきものを発見した。Aは無意識にシャオロンさんの手を掴むと、薔薇! と駆け出す。




 

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にのやも(プロフ) - モモモさん» きゃあ! そんなこと言われたら沢山書きたくなっちゃいます!🥹 ご期待に添えるようなるべく余談回挟めるよう頑張ります!🙇🏻‍♀️" (4月5日 8時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
モモモ(プロフ) - 展開が一つ一つ丁寧で面白くてもう全部読みきっちゃいました!3章以内で終わるのか...もっと書いてもいいんですよ🥹(わがまま) (4月4日 21時) (レス) id: 90bb9ca7b2 (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 梓月さん» コメント有難う御座います!🙇🏻‍♀️" 是非命狙われてる夢主ちゃんを守ってあげてください……!👊🏻✨ (4月1日 17時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
梓月(プロフ) - ぐいぐい来られると困っちゃうのあまりにも可愛い…守護らねば (3月31日 21時) (レス) @page42 id: c21b6e797e (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 滅華狂さん» あの場面はとっても慎重に書いたので、そう言って貰えて作者冥利に尽きます!😭✨ これからも更新頑張ります!🙇🏻‍♀️" (3月27日 11時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にのやも | 作成日時:2024年3月24日 17時

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