◇どこかにいった心 ページ35
兄さん様と出会ってから数日。
相も変わらず、幹部の皆さまがお話に来る日々が続いている。
よく来るのが鬱様とゾム様、続いてコネシマ様だ。
ショッピ様やチーノ様も時々いらっしゃる。
エーミール様はお忙しいのか、エーミール様の部下だという方伝てに小説を借りている。
こんこん、と叩かれた扉に返事をする。
律儀にノックしてくれるのでショッピ様かエーミール様だと思ったが、目に入ったのはいつしか見たオーバーオール。
「…久しぶりやね、Aさん」
『…サヨさん』
ほろり、涙が出てきた。無事だとは聞かされていたけども姿を見ることは無かったからだ。
「あー、もう。泣かんでや」
ぐしぐし、と強めに彼の袖で拭われた目は少しヒリヒリする。
「ほんまは、もうちょい早く顔出せるはずやってんけどさ」
そういう彼もまたω国の幹部様らしい。
本当はサヨではなくシャオロンという名前らしく、偽名だったことを謝っていた。
『いいんです、シャオロン様にも事情があったでしょうし』
「なんで様付けしとんの。いらんてそんなん」
『たとえ知らなかったとはいえ無礼は無礼ですから。幹部様を馴れ馴れしく呼ぶなんてダメでしょう』
「ええ…なんでやぁ…」
しょぼんとした彼は子犬のようだが、それに流される私ではない。それをわかっているのか諦めたように笑っていた。
その後、サヨさん改めシャオロン様と少し真剣なお話をした。
β国との戦争は無事ω国が勝利をしたこと。
改めて私の身辺調査を行なったこと。
その身辺調査で正式にω国公認の保護対象となったこと。
1度幹部全員出席の会議に同席し話を聞いて欲しいこと。
その会議で幾つかの質問に答えて欲しいこと。
そして、
今この世界は私が住んでいた世界とは別であること。
魔法や能力というものが存在すること。
元の世界に戻れる確率がとても低いということ。
申し訳なさそうに話す彼がこの説明係に選ばれた理由は、恐らく私と面識がありきちんと話が出来るため幹部の中で1番適任だと思われたからだろう。
別の世界にいるということは心のどこかでわかっていたことだった。
魔法や能力が存在することには驚いたが、ファンタジーの世界にトリップしてしまったのなら言い訳はつく。
元の世界に戻れる確率が低い、なんてものもファンタジーあるあるとしては有名だ。
「すまん、こんな話して」
そんなに絶望した顔をしていたのだろうか。
苦しそうに謝る彼の顔をぼんやりと見つめながら、どこか他人事のように思えてしまっていたのは私がおかしいからなのだろうか。
『大丈夫ですよ』
精一杯笑った私は、どんな顔していたんだろうか。
続く
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ーーー - 好きです (3月13日 4時) (
レス) @page35 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - 楽しい作品ありがとうございます！続きも楽しみにしてます。 (2023年3月27日 10時) (レス) id: 26248b9bea (このIDを非表示/違反報告)
なな - お米様抱っこ好きですw (2022年10月15日 21時) (レス) @page28 id: 7cadbb1f0e (このIDを非表示/違反報告)
スンドゥブ左衛門(プロフ) - 無名さんさん» お返事遅くなりました。どちらに掲載したのか等をお教えいただけるのでしたら、是非お願い致します。ﾂｲｯﾀとかでご連絡頂けると助かります。 (2022年8月7日 8時) (レス) id: 2b12ea7bfc (このIDを非表示/違反報告)
無名さん - 失礼します！僕今、おすすめの作品を紹介していて、作者様のお名前と作品を出してもよろしいですか！？こちらの作品僕大好きでして…ぜひ紹介したいんです！ (2022年8月6日 11時) (レス) @page35 id: ea8e66f22c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スンドゥブ左衛門 | 作成日時：2022年6月14日 15時
